RESEARCH

研究活動


FUKUOKA UNIVERSITY

「地盤を補強する」

・タイヤチップを用いた海面埋立処分場の底部粘土層保護効果の検証
・各種ジオテキスタイルを用いた路盤補強効果 他

タイヤチップやジオテキスタイルという人工材料を活用し、地盤を補強する目的で、当社とともに共同研究を進めています。

福岡大学 佐藤研一教授

研究分野

地盤工学/リサイクル工学/地盤環境工学

PROFILE

1962年福岡県に生まれる。1988年九州大学大学院工学研究科修士課程修了。福岡大学工学部社会デザイン工学科・教授、博士(工学)。タイヤチップほか、竹チップを用いた新しい舗装材料の研究開発にも尽力

 

「道路土質研究室」でジオテキスタイルの研究に取り組む

福岡大学工学部の社会デザイン工学科(旧:土木工学科)という世の中のインフラ整備をしていく学科で地盤工学と舗装工学を教えるかたわら、大学内に「道路土質研究室」を構え、ジオテキスタイルを使った研究に取り組んでいます。

ジオテキスタイル(geotextile)とは:土木工事において、土の補強や分離などに使用される、織物や不織布、編み物の総称。

一つは道路舗装に関する研究です。道路は交通開放して共用することで傷みが進むので、その傷みを少しでも和らげるために、道路の表面をアスファルトで固めます。さらにアスファルトの下に使われる地盤材料の中に、ネットや不織布など繊維を織ったジオテキスタイルと呼ばれる建設用の石油化学繊維材料を敷設することで、上から荷重がかかった時の変形を少しでも抑えることが可能になります。ジオテキスタイルを入れることで路盤を強化して、道路の長寿命化をはかることを目的としています。
当研究室では、ジオテキスタイルによる舗装帯の強度を研究しています。実際に道路の中にジオテキスタイルを入れて状態の変化を観察・検証するほか、研究室では小型模型モデルを使って実験しています。研究室の実験は、実際の車のタイヤの圧力の数分の一という非常に小さな荷重を繰り返し加えて、変形を検証します。

・ジオテキスタイルを敷いた場合と、敷いていない場合。
・さらにはジオテキスタイルを敷く深さ
・ジオテキスタイルを敷く幅
・土の状態

など条件を変えて、繰り返し実験を行います。

土の状態は、アスファルトが正常な状態であれば、雨は路盤まで伝わらないのですが、道路にひび割れが起きて雨水がしみ込んだ場合など、シチュエーションの異なるモデルで補強効果を検証していきます。
IMAGEiには様々な条件でシミュレーションによる仮説を立ててもらい、将来、どのように壊れていくのか、長期的にどれくらい効果があるのかを、モデル実験と数値解析を比較・検証しながら、協力して研究を進めています。

タイヤチップの活用で地盤を強化
海洋への汚染物質の漏洩対策に

あともう一つ、タイヤチップの有効活用に関する研究も行っています。具体的には「海面最終処分場」の海底粘土層の遮水性能を守るため、タイヤチップを活用して地盤を強化するという内容です。
山間地に作られる一般的なゴミ処理場と違い、使用済タイヤなどの廃棄物を廃棄する場所は、自然を害するという理由で地域住民の反対の声が多く、また不適正処分場の問題もあり、最近では自治体が産業廃棄物を封じ込める場所として海を使う「海面最終処分場」)が増えています。
海面最終処分場では廃棄物からの汚濁水が処分地の外へ漏れ出さないように周りを壁で囲います。底部は、一般的に、「天然の遮水層である粘土層」によって遮水されています。粘土層は水を通しにくい性質をもっていて、汚濁物質が海底に漏れていくことはほとんどありません。

ところが、海底は粘土層が薄いところもあれば、厚いところもあり、薄いところに鉄など比重の重いゴミを投機すると、かなりのスピードで底へ落ちていき、着底したときに粘土層の表面を傷めてしまいます。廃棄物が一般環境と同程度にまで無害化されるまでは、粘土層の遮水機能は健全に維持されなくてはなりません。そこで当研究所では、この粘土層の遮水性能をいかにして低下させずにゴミを廃棄できるかという研究を行ってまいりました。廃棄物の沈降、堆積特性や底部遮水層への影響を把握し、遮水層の損傷を防ぐ具体的な廃棄物の投入方法を確立することを目的として、室内投入実験を実施。そうして薄い粘土層を被覆するような細かな砂利状の材料を先行投入すると、廃棄物の落下に対するクッションとなり、粘土層の表面を守るという考察をだしました。

その後に磯部氏から、廃棄物であるタイヤチップを骨材の代わりに先行投入する案をうかがいました。タイヤチップはゴムなのでクッション性も高く、シュレッディングで大きくカットしたゴムの層ならば、水が通るため、汚濁物質を取り除く処理段階で役にたつのではないかという提案でした。処分場におけるタイヤチップの緩衝効果を検証するため、まずは室内で深さ1. 2〜1.3mの水槽を使って模擬実験を行いました。浮いてしまうタイヤを、どうすれば沈めることができるか検証を繰り返し、タイヤチップが衝撃を吸収できることが判明し、いよいよ処分場での実海面の実験になります。実際の処分場は10m以上の水深に、多様な大きさや重さのものを投入しますので、シミュレーションおよび解析分野では、磯部氏の力を借りて共同で研究を進めています。

研究×解析の連動で、環境、防災、廃棄物処理など、
社会に対する問題の解決に貢献

最近では線状降水帯による集中豪雨が増えて、毎年のように崖崩れなどの土砂災害が発生し、人が亡くなったり、インフラが遮断されてしまったりしています。崖崩れの原因を探るため、何十mもの斜面に自然の条件と同じように雨を降らす実物大の実験は不可能なので、磯部氏が取組まれているシミュレーション解析手法に頼ることになります。

土は、その場所や深さ・方向によって色々な性格を持っていますので、私たちが土の要素試験を行い、そのデータを磯部氏にお渡しし、土の持つ様々な現象を正確に数式で表現して、リアルに可視化することで、どういう状態になれば壊れるのかという解析をして、安全か安全でないかの判断をします。私は実験をする、磯部氏がシミュレーション解析する、2つがタッグを組むことで、精度を上げていくという流れになります。

循環型社会を作るためには、廃棄物をいかにして地盤材料に戻していくかという環境的な側面もあり、安全性の確認は不可欠となります。安全にして土に戻したはずのものから万が一悪い成分が出てきたときに、地盤の中でどのように広がっていくのか、地下水まで及ばないのか。未来を予測できるという点で、解析の力が重要性を発揮します。解析的なコンサルティング、設計が必要になってくるのは、今はあたりまえの状態になっていますし、自治体における災害対策でも予測解析は重要な取組みになっていくと思います。

大学側としては、IMAGEiのような民間企業との共同研究は学生のモチベーションアップにもつながってきます。自分たちの研究実験が、社会に役立っているということが目に見えるので、学生たちにとってもやりがいがある。企業とタッグを組むことは知見を社会に寄与する大学の役割でもあり、学生の育成にも意義のあることだと思います。

私はもともと民間企業の建設会社にいたこともあって、できるだけ実務に近いところで研究をめざしています。事業を進める中では困りごとが必ず存在しますので、課題を解決することで新しい技術が生まれてくることに役立つような研究を進めてまいります。

佐藤教授が今後IMAGEiに期待すること

IMAGEiは生まれたばかりの小規模の会社ですが、「小粒でもピリッとしているIMAGEiに頼むといい」「IMAGEiじゃないとできない」と高く評価される会社になりうると期待しています。

コロナ禍でなければもっと活発に行き来したり、学生をIMAGEiにインターンとして入社させ解析の技術を学ばせてもらうなど、一緒にできることもたくさんあるはずです。状況が落ち着けば、これからもたくさんコラボレーションができていくのではないかと思います。

最先端の解析の研究開発をされている磯部氏、そしてIMAGEiの力が私たちの研究実験にとって非常に大きな力となりますので、これからもよろしくお願いいたします。